任意後見契約の種類
任意後見契約には、その内容から大きく3つのタイプがあります。
<<将来型>>
今現在は健康なものの、仮に判断能力等が衰えた場合には任意後見を利用したいと
いう場合です。
将来の身上監護や財産管理を信頼のおける親族などに今から託し、備えのための契
約を事前に結んでおくもので、任意後見契約の基本型です。
本人が判断能力を有したまま亡くなった場合、任意後見の効力は発生しません。
<<移行型>>
病気などで判断能力が低下する前に、今から支援をしてもらいたいという場合で
す。
「見守り契約」とは、本人の心身の様子を親族や任意後見人、その他の者が月に1
〜2回程度訪問して確認し記録するといった内容の契約です。
まだ判断能力や体力は十分あるものの、財産管理や見守りについてすぐにでも手助
けが欲しいという趣旨の契約が、「移行型」です。
認知症の前兆はないものの足腰が不自由であったりして体が十分に動かないとき、
財産管理をすぐにでも第三者に任せたいという場合には、例えば任意後見の候補者
である受任者と「財産管理委任契約」を結び、預貯金や有価証券、賃貸物件や賃貸
収入の管理等と一任することもあります。
任意後見と財産管理委任契約の受任者が同一の場合、あらかじめ任意後見が開始す
るタイミングで財産管理委任契約を破棄すると定めておくことで、財産の引継ぎな
どがスムーズに行えます。
将来型と同様、本人が判断能力を有したまま亡くなった場合、任意後見の効力は発
生しません。
<<即効型>>
客観的に見て本人にまだ契約をする能力はあるものの、判断能力が失われつつあ
り、本人もそれを自覚しておりすぐにでも支援が必要な場合です。
即効型を利用して、ただちに家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てます。許
可が下りれば、任意後見がつつがなく始まります。上記2つとは異なり、すぐに任
意後見が始まるという点がポイントです。
本人に既に判断能力がないと判断されればこうした契約はその時点で新しく結ぶことは
できません。
認知症は急性のものではないとはいえ、任意後見を利用したいという希望があるのであ
れば、心身の丈夫なうちに各種契約を済ませておくほうがよいでしょう。
「見守り契約」や「財産管理委任契約」は、任意後見監督人の選任申立ての前であれ
ば、内容を変更したり破棄したりすることも可能です。
任意後見を利用しようという場合、基本となる「任意後見契約」や「財産管理委任契
約」の他、「死後事務委任契約」や「遺言書の作成」を併せて行うこともあります。
任意後見の受任者になる場合、各種契約は原則としてすべて公正証書で作成し、かつ早
め早めを心掛けることがよいでしょう。
<ケース1>
判断能力が十分にある
↓
今後は代わりに財産管理を行ってもらいたい
↓
・財産管理委任契約(現在)
・任意後見契約(将来のため)
・見守り契約(万全を期すため)
<ケース2>
判断能力が十分にある
↓
・当分は自分で財産管理をしたい
・認知症になったら財産管理をしてもらいたい
↓
・任意後見契約(将来のため)
・見守り契約(万全を期すため)
<ケース3>
判断能力に自信がなくなってきた
↓
すぐに代わりに財産管理をしてもらいたい
↓
・任意後見契約(契約締結能力がある場合)
・保佐、補助開始の申立て(契約締結能力がない場合)
<ケース4>
判断能力が既に不十分
↓
すぐに財産管理をしてもらいたい
↓
法定後見の申立て
(状況によって、後見・保佐・補助のいずれか)