認知症などで判断能力を失ったときに起きること
本人が重度の認知症などによって判断能力を失った場合、預貯金や不動産などの財産が
『凍結』されてしまう可能性があり、そうなると、家族や親族がその財産を使ったり、
動かしたりすることができない状態になります。
例えば、次のような状態になります。
@銀行の預金口座
窓口に行くことが必要となる取引は一切できません。キャッシュカードでの現金の
引き出しは可能かもしれませんが、法的には問題があり、最悪の場合、相続開始時
に他の相続人から損害賠償を請求されることもあり得ます。
預金者保護(注意義務違反の責任追及を避ける意味もありますが)のため、金融機
関は内部で出入金のモニタリングをしており、通常と異なる取引が続くと、本人へ
の確認連絡や、とりあえずの預金凍結などをすることがあります。
A土地・建物・マンションなど本人名義(共有名義)の自宅
建て替えや売却、賃貸などができなくなります。
B賃貸アパートなどの収益不動産
借主との契約更新ができなくなったり、大規模修繕のための銀行からの融資が受け
られなくなったりします。
C有価証券(上場株式など)など換価価値のある財産
解約などの売却処分ができなくなります。
D経営する会社の大多数の株式を保有している場合
譲渡や売却ができなくなることはもちろんのこと、株主総会が開催できないため新
社長への交代もできないので、最悪の場合、経営が暗礁に乗り上げます。
凍結された財産を『解凍』するには
認知症や精神障害などで判断能力が不十分になった人を、法律面や生活面で保護する仕
組みがあり、この制度を『成年後見制度』といいます。
これは、本人に代わって判断をする『成年後見人』を立てることによって本人を支援す
る制度です。
本人の意思能力が欠如していても、成年後見制度に基づく成年後見人がいれば、凍結さ
れた財産の解凍が可能になります。後見人が本人に代わって手続きをすれば、法的には
何の問題もありません。
後見人には裁判所が選任する『法定後見人』と、本人があらかじめ選任する『任意後見
人』の2種類があります。
それぞれについての詳しい説明は、別ページを確認してください。