死後離婚とは?
『死後離婚』とは造語であり、そもそもそのような制度は存在しません。したがって、
夫婦のどちらか一方が死亡した後に離婚届を提出することはできません。
配偶者が死亡した場合には婚姻関係は解消されたものとみなされ、遺された配偶者が希
望すれば再婚をすることができます(厳密には、残されたのが妻である場合には100
日間の待婚期間が必要です。)。
配偶者と死別後に再婚しない場合には、遺された者は戸籍上独身になる訳ではありませ
ん。配偶者の死亡届提出することにより戸籍には死亡の旨が記載されるだけで、遺され
た配偶者が自動的に戸籍から抜けたり新しい戸籍になったりするわけではなく、従来と
同じ戸籍にそのまま残り続けます。
先述のとおり、配偶者が死亡すると婚姻関係は自動的に解消されますが、死亡届を提出
する以外他に何の手続きもしなければ『姻族関係』は継続します。これに対して、夫婦
が離婚した場合には、離婚届を提出するだけで『姻族関係』は終了します。
『姻族』とは、婚姻によって生じる親戚のことで、配偶者の血族(義理の親族)のこと
をいいます。
配偶者が生きている間だけではなく、亡くなった後も遺された配偶者を悩ませる『姻
族』の問題には、例えば以下のようなものがあります。
・嫁姑の関係
・義理の親の介護や扶養
・義理の兄弟との関係
このような問題から抜け出す方法が、『姻族関係終了届』です。この届を提出する
と、配偶者の三親等(義理の両親・おじおば・甥姪など)までの姻族関係を終了させ、
晴れて他人同士となることができます。
この『姻族関係終了届』は、仮に配偶者の親族が反対や拒否をしたとしても、また、そ
もそも相手方に知られることなく提出することができます。
この届を提出することにより、配偶者が死亡した後に実質的に離婚と同じ効果を得るこ
とができるため、この『姻族関係終了届』を提出することを指して『死後離婚』と呼ぶ
ことが多いのかもしれません。
※残された妻が夫亡き後に『姻族関係終了届』を役所に提出し、その後亡夫を筆頭者と
する戸籍から抜ける(結婚前の戸籍に戻るまたは新しく戸籍を作る)ためには、『復
氏届』を役所に提出する必要があります。
『姻族関係終了届』とは?
『姻族関係終了届』の用紙は、役所の戸籍課などに行けば窓口で受け取ることができま
す。
所定の欄に
@ 自分の氏名
A 自分の生年月日
B 自分の住所・世帯主の氏名
C 自分の本籍・筆頭者の氏名
C 死亡した配偶者の氏名
D 死亡した配偶者の死亡年月日
E 死亡した配偶者の本籍・筆頭者の氏名
F 日中連絡のとれる電話番号
を記載し、署名・押印をして提出をするだけです。
提出先は、自分の本籍地または住所地の市区町村の窓口(戸籍課など)で、提出の際に
は戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)と印鑑、届出者の運転免許証などの身分証明書が必
要となりますが、市区町村によって必要書類は異なりますので、詳しくは提出先の窓口
に事前に確認をしましょう。
『死後離婚』のメリット・デメリットは?
<<死後離婚のメリット>>
・義理の両親や兄弟との関係を切ることができる
・義理の両親の世話や介護、金銭的扶養の必要がなくなる
・亡夫や義理の両親と同じお墓に入る必要がなくなる
・亡配偶者の遺産や遺族年金は受け取ることができる
※『姻族関係終了届』はあくまで姻族との関係を終了するための書類なので、亡配偶
者との関係は継続し、結婚していた事実がなくなるわけではないため、書類提出後
も遺産を相続する権利や遺族年金を受給する権利は残ります。
※配偶者の生前に離婚した場合には上記の権利は残らないので、注意が必要です。
<<死後離婚のデメリット>>
・一度『姻族関係終了届』を提出すると取り下げることができない
⇒養子縁組をすることにより関係回復は不可能ではありませんが・・・
・お墓参りや法要などの連絡がまわってこなくなる
・義理の両親と同居していた場合には引越しをする必要がでてくる
配偶者の生前の離婚も相当ストレスのかかる行為ではありますが、『死後離婚』も同様
もしくはそれ以上に精神的負担やダメージがかかるものです。
短略的に行動することは避け、よくよく考えた後に結論を出すようにしましょう。