離婚公正証書
よって、高い証明力があるうえ、債務者が金銭債務の支払いを怠ると、裁判所の判決な
どを待たず直ちに強制執行手続きに移ることができます。
つまり、金銭の支払いを内容とする契約の場合、債務者が支払をしないときには、債権
者は裁判を起こして裁判所の判決等を得なければ強制執行をすることができませんが、
公正証書を作成しておけば、すぐ執行手続きに入ることができるということです。
離婚後に元配偶者と一切の交流がない場合には、公正証書を作成する必要はありません
(作成する意味がない)が、離婚後に養育費のやり取りや、子どもとの面会交流などが
ある場合には、公正証書の作成を検討してはいかがでしょうか?
●離婚公正証書作成の流れ |
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夫婦間で協議した内容を離婚協議書にまとめ、それを公証役場で公証人に公正証書にし
てもらい、最後に公証役場で夫婦で手続きを完了させる(委任を受けた代理人でも手続
き可)という流れになります。
離婚協議
離婚協議書の作成
公証役場(公証人)に相談
公証役場で手続き
ここで一番重要なのはの離婚協議です。
公正証書に限らず、契約書で重要なのは文面ではなく中身です。夫婦がお互いに納得で
きる契約内容であることが大前提です。
また、公正証書は約束が破られたときに強制執行ができるという点に注目が集まりがち
ですが、そもそも最初から守られないであろう内容にすべきではありません。
「相手が無理なく守れる」・「相場の範囲内におさまる」現実的な内容であることが大
切です。
強制執行といえども強制執行できる財産がある場合に限られ、「借金をしてでも支払
え」と命じるものではありません。
●離婚公正証書に記載すべき内容 |
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離婚協議書が離婚公正証書の基となりますので、記載すべき内容は離婚協議書のそれと
同じになります。
それぞれの項目についての説明は、前ページの「離婚協議書とは?」をご参照くださ
い。
子供の親権について
子供との面会交流権について
子供の養育費について
婚姻費用について
慰謝料について
財産分与について
年金分割について
<<豆知識>>
『公正証書の契約内容は変更できないわけではありません。』
例えば養育費の場合、養育費の根拠となった前提が変わった時点で、支払い金額の増減
は認められています。
内容変更が認められる理由の例としては、
* 会社が倒産した
* ボーナスがゼロになった
* 再婚して扶養家族が増えた
* 病気や怪我で働けなくなった
* 転職して給料が下がった などなど
このような場合には、相手方が納得しなくても家庭裁判所に調停を申し立てることで、
金額の変更を成立させることができるケースがあります。
●離婚公正証書作成の手数料 |
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公正証書作成の手数料は国が定めており、手数料の算定表は以下のとおりです。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごと
に13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごと に11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 |
249,000円に超過額5,000万円までごと に8,000円を加算した額 |
協議離婚の届出に際して決定した慰謝料や財産分与の取り決め、子供の養育費の支払い
を公正証書にする場合は、慰謝料・財産分与と養育費が別個の法律行為として扱われて
それぞれの手数料が算定され、その合計額が証書の手数料額となります。
また、養育費の支払いは定期給付に当たるため、支払期間が長期にわたる場合でも10
年分の金額のみが目的の価額となります。
目的の価額 = (慰謝料・財産分与の手数料)+(10年分の養育費の手数料)
●公正役場で必要な書類等 |
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@当事者本人の確認資料
A戸籍謄本
離婚公正証書作成後に離婚する場合:現在の家族全員が載った戸籍謄本
既に離婚済みの場合 :当事者双方の離婚後の戸籍謄本
B不動産の登記簿謄本および固定資産納税通知書または固定資産評価証明書
※財産分与として不動産の所有権を相手方に移転する場合に必要です。
C年金分割のための年金手帳等
※当事者の年金番号を公正証書に記載する必要があるので、年金番号が分かる年金
手帳等が必要です。