事実婚
実質的には夫婦関係といえる男女が法的に入籍していない状態、つまり、婚姻届を
提出していない夫婦は事実婚の夫婦ということになります。
「内縁」も基本的には事実婚と同じ意味をさし、お互いに結婚の意思がありながら
(ない場合、出来ない場合もありますが。)入籍せず、そのうえで法律婚の夫婦同
様に長期間の共同生活をしている関係です。
どちらの場合も、基本的にはお互いの同居や貞操義務、扶養義務などの責任を負う
ことになります。
<<法律婚との違い>>
事実婚であっても法律婚と同様に相手方の扶養に入ったり、夫婦として住宅ローン
を組んだり携帯電話を契約したりすることも可能(それぞれの事業会社によっても
異なりますが。)です。
ただし、扶養に入ることはできても法律上の「配偶者」と認められているわけでは
ないので、配偶者控除を利用することはできません。また、会社の家族手当が受け
られるかどうかも、勤め先の会社によって異なります。
保険会社によっては、事実婚であっても生命保険の保険金の受取人として認められ
ることはありますが、相手方の相続人になることはできません。
パートナーが亡くなった際に有効な遺言書等が残されていなければ、財産を受け継
ぐことができません。
<<事実婚のメリット>>
@ 夫婦別姓がかなう
法律婚では夫婦の一方が他方の戸籍に入籍するので、必然的に「夫婦同姓」
となります。
その理由はさまざまですが、姓を変えることに問題や抵抗がある場合には、
事実婚をという選択肢があります。
※婚姻届を出さずにお互いが同居する場合、単に住民票を役所に提出すると
「世帯主」と「同居人」と記載されますが、双方に婚姻の事実がないこと
が確認されれば、「妻(夫)(未届)」と記載してもらうことができま
す。
A 関係を解消しても戸籍に残らない
法律婚の場合は夫婦関係を解消すると改めて法的な届出(離婚届等)が必要
となり、双方の戸籍には離婚した旨が記載されます。
事実婚の場合はそもそも結婚の時点で法的な手続き(婚姻届の提出等)を踏
んでいないため、関係を解消しても戸籍には何も残りません。
B 夫婦関係が対等に維持される
入籍をすると一方の姓に変わることから、「家に入る」・「家に迎え入れら
れる」という意識が少なからず残っているようです。
事実婚であれば夫婦別姓なので、事情があって仮に別離を考える際でも比較
的声をあげやすく、お互いの合意のもとで平等な夫婦関係が維持しやすいと
言えます。
<<事実婚のデメリット>>
@ 子どもは母の戸籍に入る
事実婚において二人の間に子どもが生まれた場合、自動的に認められるのは
母子の関係のみであり、父子の関係については「認知」の手続きをしなけれ
ばならず(認知をしなければ父方の戸籍に記載されません。)、子どもは母
の戸籍に入り、母の姓を受け継ぎます。
※父の姓に変更したい場合には、認知をしたうえで家庭裁判所の許可をもら
う必要があります。(子の氏の変更の申立て)
A 相続権がない
前述したとおり、事実婚のパートナーの相続権がありません。そのため、パ
ートナーに万が一のことがあった場合でも自動的に財産が相続されることは
なく、有効な遺言書等が作成されていなければ、パートナーの親族などの相
続人がその財産を引継ぐことになります。
B 各種控除が受けられない
扶養手当とは異なり税法上の各種控除は、控除を受けられる者が「民法が定
める配偶者」と定められています。したがって事実婚におけるパートナーは
配偶者とは認められず、税金の配偶者控除は受けられません。
C その他
病院や施設などで万が一命にかかわる処置をする場合、家族の同意が必要と
なるケースがありますが、法律婚でない事実婚のパートナーである場合、医
療側から話を聞くことや処置に同意をすることが認められない場合もありま
す。