古物営業法改正について
2018年(平成30年)4月25日に古物営業法の一部を改正する法律が公布されま
した。
この改正では施行日が2段階に分かれており、1段階目は2018年(平成30年)10
月24日、2段階目は2020年(令和2年)4月1日にスタートする予定となってお
ります。
第1段階では「営業制限の見直し」、「簡易取消しの新設」、「欠格事由の追加」など
が追加され、第2段階では「許可単位の見直し」が追加されます。
主なものについて、以下で説明していきます。
<<営業制限の見直し>>
従来は、営業所以外の場所において仮に設けられている店舗を表す用語として
「露店」が用いられていましたが、改正において「仮設店舗」と改称されました。
それに伴い古物商または古物市場主は、営業日の3日前までに仮設店舗の所在地を
管轄する警察署に日時・場所の届出をすれば、仮設店舗においても買い受け等のた
め古物を受け取ることができるようになりました。
仮設店舗とは、営業所以外の場所で仮の店舗のことであり、簡単に移動ができる
(お祭りなどで見かける露店のイメージ)必要があります。
仮設店舗で古物を買い受けする古物商に届出義務があり、郵送での届出は認められ
ておりません。なお、届出に係る費用は無料です。
<<簡易取消しの新設>>
所在不明の古物商または古物市場主の許可については許可証が悪用される恐れがあ
ることから、彼らが所在不明となり所在地等を確知できないときには、公安委員会
が官報により公告し公告後30日を経過しても申出がない場合には、許可が取り消
されることになりました。
<<欠格事由の追加>>
盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るという法目的に照らし、盗品等に係る
犯罪である窃盗を犯した者ならびに暴力団員およびその関係者については、古物商
または古物市場主に課せられた各種義務の適切な履行を期待できないことから、欠
格事由が追加されました。
<<非対面取引における本人確認方法の追加>>
古物商におけるインターネット等を利用した非対面取引が急速に普及している実態
を踏まえ、相手方の真偽の確認方法として、新たに5つの取引方法が追加されまし
た。
本人確認方法を正しく実施していない場合には、6か月以下の懲役または30万円
以下の罰金、またはその両方が科せられますので、注意しましょう。
なお、本人確認方法については以下のとおりです。
★取引き相手より電子署名付きのメール送信を受ける。
★取引き相手から印鑑証明証と登録した印鑑を押印した書面の送付を受ける。
併せて、氏名・住所・職業・年齢の申し受けを実施する。
★取引き相手に本人限定郵便等を送付して到達を確かめる。
★取引き相手に本人限定郵便等により古物の代金を送付する契約を結ぶ。併せ
て、氏名・住所・職業・年齢の申し受けを実施する。
★古物商が提供したソフトウエアなどを活用して取引き相手から運転免許証等の
身分証明の画像の送信を受け、記載された住所宛に簡易書留を転送なし扱いで
送付して到達を確かめる。
★古物商が提供したソフト等を活用して取引き相手から容貌を撮影した画像の送
信を受け、かつ運転免許証等の本人確認書類の画像送信を受ける。
★古物商が提供したソフトウエアにより取引き相手から容貌を撮影した画像の送
信を受け、運転免許証等の写真付き身分証明書等のICチップ情報の送信を受
ける。
★取引き相手から運転免許証などのICチップ情報の送付を受け、相手方の住所
宛に簡易書留等を転送しない扱いで送付して到達を確かめる。
★取引き相手から地方公共団体情報システム機構が発行した電子署名および電子
署名を行った氏名・住所・職業・年齢に係る電子的記録の提供を受ける。
★取引き相手から特定認証業務を行う署名検証者が発行した電子証明書と電子署
名を行った氏名・住所・職業・年齢に係る電子的記録の提供を受ける。
★取引き相手から住民票の写し等の送付を受け、記載された住所へ簡易書留等を
転送なし扱いで送付して到達を確かめる。
★取引き相手から住民票の写し等の送付を受け、記載された本人名義の預金口座
へ古物代金を入金する。併せて、職業および年齢に係る電子的記録の提供を受
ける。
★取引き相手から身分証明書、運転免許証、国民健康保険証のコピーを受け、記
載住所宛に簡易書留等を転送なし扱いで送付して到達を確かめる。さらにコピ
ーに記載された本人名義の預金口座等へ代金を入金する契約を結ぶ。
★IDとパスワードの送信を受け、取引き相手の真偽確認のための措置を既にと
っていることを確かめる。
★取引き相手から運転免許証、国民健康保険被保険者証など異なる2種類の身分
証明書もしくは身分証明書等のコピーと公共料金領収書のコピーの送付を受け、
記載された住所に簡易書留を転送なし扱いで送付して到達を確かめる。
<<帳簿の様式>>
古物営業法の実態に鑑み、自動車について古物の特徴欄における記載例を規定する
などの改正が行われました。具体的には、特徴欄に「検査証記載のナンバー」・
「車名」・「車体番号」・「所有者の氏名等」を記載することとされました。
<<主たる営業所等の届出>>
古物商または古物市場主は、主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会に、主た
る営業所等その他の営業所等の名称および所在地の届出を行うことができることに
なりました。
古物商および古物市場主は、2018年(平成30年)10月24日から2020
年(令和2年)3月31日までに「主たる営業所等届出」をする義務があり、この
届出をすることで、改正法全面施行日以降においても新法に対応した古物商許可を
得ているとみなされます。(期間内に届出をしていない場合には、期間経過後は許
可が失効することになるので注意が必要です。)
既に主たる営業所が決まっているのであれば、すぐに届出手続きをしておいたほう
がよいでしょう。
全国や複数都道府県に古物営業所がある場合でも、そのうちの1か所を主たる営業
所として決める必要があります。(法人の場合には、登記簿上の本店と主たる営業
所が同一である必要はありません。)営業所が1か所しかない場合でも、その営業
所を主たる営業所として届け出る必要があります。
郵送での届出は認められておりません。なお、届出に係る費用は無料です。
<<許可単位の見直し>>
これまでは営業所等が所在する都道府県ごとに古物営業の許可が必要でしたが、2
020年(令和2年)4月1日以降は、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委
員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届出で足り
るようになります。(つまり、その他都道府県の許可が不要となります。)
なお、2019年(令和1年)12月14日にも古物営業法の改正があり、欠格要件か
ら「成年被後見人」や「被保佐人」が除外され、「心身の故障により古物商または古物
市場主の業務を適正に実施することができない者」が追加されました。
これは、成年後見人と被保佐人のすべてが古物商許可を取得できるようになるという訳
ではなく、許可申請者ごとに個別的・実質的に判断されるようになるということで、場
合によっては、成年後見制度を利用していない人であっても能力がないと判断される可
能性も考えられるということです。(ただし、現時点では、誰がどのような方法で判断
するのかは明らかになっていません。)
ちなみに成年後見制度とは、判断能力がない人を詐欺や悪徳商法などから保護するため
の制度で、成年被後見人や被保佐人は、自分のした契約をあとから一方的に取り消すこ
とができます。(実際には、成年後見人や保佐人が取消権を行使することによって取り
消すことになります。)
しかし、古物営業法の改正によって古物商許可を取得した成年被後見人や被保佐人は一
般の古物商と同じように扱われますので、古物取引については、契約をあとから一方的
に取り消すことはできなくなりますので注意が必要です。